特定技能と技能実習はそれぞれ、いくつかある外国人の在留資格のうちの1つです。
特定技能と技能実習は混同されやすいですが、内容や目的が大きく異なるため、受入れの際には注意しなければなりません。
ここでは、特定技能と技能実習の違いとして代表的なものを10個ご紹介します。
①目的
特定技能と技能実習は「外国人を企業で受け入れる」という点では同じですが、受入れの目的が異なります。
特定技能は、日本の人手不足を補うための制度。
技能実習は、日本で習得した技術を母国に持ち帰って広めてもらうという、国際貢献のための制度です。
②作業内容
特定技能は単純労働を含む業務に携われるのに対し、技能実習は単純労働ができません。
特定技能は日本の労働力不足を確保するための制度なので、専門的な知識を必要としない単純労働を含む仕事もすることができます。
対して技能実習は、専門性の高い作業を学ぶために来ているので、単純労働をさせることができません。
ただし、特定技能においても単純労働を「含む」仕事に従事できるのであって、単純労働のみに従事させるものではない点は注意が必要です。
③職種
特定技能と技能実習は受け入れられる職種が異なります。
特定技能を受入れ可能な職種は、特定技能1号が16分野、特定技能2号が11分野。
技能実習については90職種です。
※いずれも2024年5月現在
④技能水準
特定技能と技能実習は求められる技能水準が異なります。
特定技能は、1号・2号ともに、就労する分野の知識が一定以上あることが条件です。
これに対し、技能実習は入国前に特定の技能を習得する必要がありません。
⑤試験
特定技能は「特定技能評価試験」と「日本語能力試験」の合格が条件です。
特定技能は、日本の労働力不足を解消するための「即戦力」になってもらうことが目的なので、ある一定レベルに達している人材のみが特定技能外国人になれます。
技能実習の場合は、介護職種のみ日本語能力検定N4レベルであることが求められますが、その他の職種では特に試験はありません。
⑥働き方
特定技能は「就労」なので、同じ職種であれば転職可能です。
対して技能実習は「実習」であり、就労しているわけではないため、転職といった概念自体が当てはまらず、仕事を変えることは原則できません。
⑦在留期間
特定技能の在留期間は、特定技能1号が通算5年、特定技能2号が上限なしです。
技能実習は1号が1年以内、2号が2年以内、3号が2年以内(合計最長5年)と期間に限りがあります。
⑧家族の帯同
特定技能2号のみ、要件を満たせば家族(配偶者、子)の帯同が認められています。
⑨受入れ人数
特定技能は、「(1号特定技能外国人と)外国人建設就労者(との合計)の数が、常勤職員の数を超えないこと」という定めがあります。
上記制限の範囲内であれば、「労働力不足を補うため」の制度なので、基本的に企業ごとの受入れ人数に制限はありません。
ただし、建設分野では企業単位、介護分野では事業所単位で人数枠が設定されています。
技能実習は、技能を習得してもらうことに重きを置いているため、しっかりと指導ができる人数に抑える必要があります。
そのため、技能実習は、企業規模ごとに職員数などに応じて人数枠があります。
⑩関係団体
特定技能は、企業と特定技能外国人は「雇用関係」にあるため、基本的にはその2者間で完結します。(日本での生活のサポートなどを行う登録支援機関が介在することもあります)
技能実習の場合、監理団体や技能実習機構、送出機関など、企業と実習生の間に入る団体や関係者の数は多くなります。
特定技能と技能実習の違いから考えたいこと
特定技能は労働力不足を補うための即戦力が得られる一方、高いレベルの技能や日本語力が求められるため、そもそもの母数が少なくなりやすいという面があります。
しかし、特定技能「2号」の場合は在留期間に上限が無く、家族の帯同も認められるなど、日本にしっかり根付いて仕事をしてくれる点が魅力です。
また、海外の知見や文化の違いを生かして、グローバルな事業展開を行える可能性もあります。
技能実習の場合は試験などがないため母数が多く、人が集まりやすいのが特徴です。
特定の技能に長けているわけではないので、日本語とともに指導していくのにはやや骨が折れるかもしれませんが、初心者ならではの順応性や吸収力が期待できるでしょう。
未経験OK・家族の帯同不可という点から、若い世代が集まりやすいという面もあります。
技能実習は特定技能に移行も可能。その方法とは?
技能実習において実習先が悩みがちなのが「せっかく技術を丁寧に教えても、母国に帰ってしまう」という点。
そもそも「習得した技術を母国に持ち帰る」ことが目的なのですが、実習を通して一から丁寧に指導していくうちに「今後も働いてほしいな」と思うのは自然な流れでしょう。
技能実習生としても、せっかく日本に慣れた頃に母国に帰るのはもったいないと感じる人も少なくないはずです。
そんな技能実習ならではの悩みを解決できるのが、技能実習から特定技能への移行です。
技能実習2号を2年10カ月以上、良好に修了した技能実習生は、同職種の分野に限り特定技能1号へ移行することができます。
特定技能1号を取得するためには「技能試験」と「日本語能力試験」が必要ですが、これも免除されます。
移行方法としては、書類の提出のみ。
技能実習2号の在留期限が終了する前に、管轄の地方出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請書」と「特定技能1号」取得に必要な書類を提出すると、特定技能1号に移行することができます。
登録支援機関と監理団体の違いについても理解を
特定技能と技能実習には関係団体があり、こちらも混同されやすい部分です。
登録支援機関は、特定技能制度におけるサポート団体のこと。
特定技能外国人の生活から仕事まで、日本における暮らし全般を支援する組織のことで、民間企業も参入可能です。
支援業務はあくまでも委託なので、特定技能外国人が雇用されている企業内で支援業務を行う場合は、登録支援機関を利用する必要はありません。
監理団体は、技能実習において、適切な実習が行われているかを確認するなど「実習先の企業の監督」を目的としている団体です。
監理団体は非営利法人である協同組合が運営しており、民間企業の参入はできません。
また、監理団体は3か月に一度以上、実習実施期間を監査し、必要な場合は指導を行います。
まとめ:特定技能と技能実習の違いは多いが、移行できるケースもある
世間のイメージとして、ひとくくりにされがちな「特定技能」と「技能実習」。
しかし、制度の目的や内容は異なる点が多く、両者はまったくの別物です。
特定技能は、日本の労働力不足解消のための即戦力となってもらうのが目的です。
そのため、特定の産業分野における一定の技能水準を満たしており、かつ、日本語能力もある程度備わっている必要があります。
対して技能実習は、試験などは特に必要が無く、未経験でもOK。
受入れ職種も多いなど門戸が広いので、人材が豊富であることが特徴です。
技能実習は期間に定めがありますが、職種が同じであれば特定技能1号に移行することもできます。
特定技能2号になれば在留期間に上限が無く、家族の帯同も認められるので、長く仕事を続けてもらうこともできるでしょう。
特定技能と技能実習では関係団体も間違えられやすいですが、こちらもそれぞれ目的や義務などが異なり、関わる団体自体も異なります。